国民年金や厚生年金、健康保険のことを、社会保険と呼びます。そして、マスコミの人たちの頑張り(?)によって、日本では社会保険に対して悪いイメージを持っている人が多いようです。特に、公的年金は、破綻寸前だと思っている人も少なくないようですね。
でも、よくよく調べてみると、社会保険というのはかなり有利な制度だという事がわかります。一方、生命保険というのは、社会保険で不足する分を補うことくらいしか出来ないのです。
社会保険に関して、マスコミの言うことが、全て間違っているという気はありません。確かに問題点があるのは事実です。
しかし、マスコミの報道するイメージほど酷いものかは、一旦冷静に考えてみる必要が有るでしょう。そうしないと、必要以上に生命保険会社を儲けさせることになってしまいます。
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生命保険会社の保険は社会保険の上乗せ
生命保険会社が扱う保険と言うのは、基本的には社会保険(健康保険、厚生年金保険、国民年金など)の上乗せと言う位置づけです。その話をする前に、そもそも生命保険とは何かを簡単に確認しておきましょう。
生命保険会社が扱う保険というと、誰かが亡くなると保険金が支払われるというタイプの保険を思い出す人も多いでしょう。こういう保険を、死亡保険と言います。
しかし、生命保険会社が扱っているのは、死亡保険だけではありません。死亡保険の他にも、生存保険という保険も扱います。
生存保険というのは、決められた年齢まで生きていると、お金が貰えるというタイプの保険のことですね。生存保険の代表は、個人年金保険という、生保会社が扱う年金タイプの積立商品です。
個人年金保険は決められた年齢まで生きていると、年金という形でお金がもらえます。ですから、生存保険の一種であることがわかります。1
この他にも、医療保険やガン保険と行った保険も扱います。医療保険というのは、入院すると入院日数に応じてお金を貰える保険ですね。
医療保険やガン保険は、正確に言うと生命保険ではありません。しかし、生命保険会社で扱われているので、ここでは死亡保険などと同列なものとしておきましょう。
生命保険と社会保険の対応関係
さて、社会保険と生命保険の対応させる形で、両者の比較をしてみましょう。
まず、国民年金や厚生年金は、一番代表的な生命保険である死亡保険の機能を持っています。国民年金や厚生年金でも、誰かが亡くなるとお金が貰えるという事が有るのです。
具体的には、被保険者(加入者のこと)や受給資格者(老齢年金をもらっている人や貰う予定の人)が亡くなると、遺族基礎年金や遺族厚生年金がもらえます。この遺族基礎年金や遺族厚生年金は、生命保険と類似の機能と考えていいでしょう。
公的年金に入っている人や入っていた人が亡くなるとお金が貰えるわけですから、死亡保険と大きな違いはありませんよね。
また、生命保険会社の医療保険は、健康保険や国民健康保険と給付が重複する部分があります。健康保険や国民健康保険は、ケガや病気全般に対する保険ですが、医療保険は医療費の中でも入院費用に関する保険です。
さらに言うと、国民年金や厚生年金の老後の年金である、老齢基礎年金や老齢厚生年金と、生命保険の個人年金保険の対応関係は明らかでしょう。どちらも、老後の生活費を補うための仕組みです。
このように、生保会社の商品と社会保険には、かなりの重複した分野が有るわけです。もう少し正確に書くと、社会保険の給付の一部が、生保会社の保険とダブっているわけです。
生命保険の保障の多くは、社会保険の給付でも存在する。
こう考えると、社会保険というのが、私たちの生活を守る上で、より重要な枠組みであることがわかります。広い範囲をカバーしているのですから、当然ですよね。それに対して、生命保険会社の保険は、社会保険と比べて部分的な保障しかありません。
ですから、順番としては、まず社会保険について考える必要があります。社会保険について考えた上で、不足する部分があれば生命保険で補うというスタンスを取ることが重要です。
でも、社会保険と生命保険は重複する部分が多いという点は、意外と知らない人が多いようです。これを知らないと、生命保険の営業に、簡単に騙されてしまうこともあります。
本来は社会保険があるから心配しなくて良いにもかかわらず、そのことを無視して不安を煽ったりするのです。注意しましょう。
例えば、遺族基礎年金や遺族厚生年金の存在を無視して、死亡保険の見積もりを出す生保会社が有るようです。某生保会社のシミュレーションツールでも、公的年金を無視していましたから、社を挙げてそういう営業をしていたのでしょう。
公的年金について知らないと、生保の営業に騙される。
社会保険は非常に有利な制度
新聞の記事を読んでいると、社会保険と言うのは批判の対象になることが多いようです。特に、公的年金制度に関してはボロクソに叩かれていますね。あと、役人批判でも使われます。
実際私自身も、社会保険は多くの問題を抱えていると思っています。グリーンピアなどの役人の大失敗も、そのとおりだと思います。
しかし、国民にとって有利不利という視点で考えると、生命保険に比べて社会保険はよっぽど有利な制度なのです。比べ物にならないくらい有利です。
というか、生命保険が不利なんですけどね。そのあたりの点を確認してみましょう。
生保会社の陰謀でマスコミは社会保険を叩いている?
繰り返しますが、マスコミの皆さんは社会保険の批判に一生懸命です。また生保会社は、自分たちの保険が有利であるような印象を与えるCMを流します。
この2つのメッセージを信じて、生保会社の保険の方が有利だと錯覚してしまう人もいるようです。特に、マスコミの社会保険批判はかなりのものですからね。ちゃんと勉強していない人がそう思ったとしても、無理はないところです。
しかしそれは、完全に誤解なんですね。詳しくは後述しますが、手数料という点から考えても、政府や企業負担という点から考えても、社会保険の方が遥かに有利なのは疑いがありません。
状況証拠から考えると、結果的に生保会社が有利になるように、マスコミは社会保険批判をしているのでは無いかとすら思えてしまいます。特にテレビにとっては、保険会社は良いお客さんでしょうからね。「便宜を図っているの?」なんて思ってしまうのです。
もちろん、マスコミが生保会社の為に社会保険批判をしているというのは、単なる妄想なんですよ。でも、そんなふうに見えなくもない状況です。
そもそも、生命保険なんて、過去に大規模な不払い事件を起こしている酷い業界なんですけどね。2 イメージ戦略が上手く行っているのかどうかは知りませんが、多くの人はすっかり忘れてしまっているようです。
マスコミが作るイメージに踊らされないようにしましょう。
社会保険の保険料は全体としてみるとプラスになって返ってくる
それでは、社会保険は生命保険と比べて何が有利なのでしょうか。少し具体的に見てみましょう。
保険の有利不利は、支払った保険料に対しての給付の額を考えるとわかります。
社会保険というのは、基本的には、10の保険料を支払うと10以上のの給付が返ってきます。国民全体の保険料に対して、給付の方が大きくなるのです。
まず社会保険の場合は、手数料がかからない事が多いです。これは何故かと言うと、事務に関する経費は、政府などが負担するケースが多いからです。
また、組合けんぽなどは規模が大きいので、スケールメリットが活かせて一人あたりの手数料は小さくなります。さらに言うと、社会保険は宣伝にお金がかからないので、その分手数料も小さく出来ます。
ですから支払った保険料の多くは、基本的には全額給付に回せます。これだけでも、社会保険は有利なのです。
それだけではありません。社会保険には、国庫からの補助が給付に上乗せされることもあるのです。例えば、国民年金の場合は、給付の半分は国庫からの補助です。
ということは、税金が補助をする分だけ、結果的に支払った保険料以上の給付があるわけです。
さらに言うと、健康保険や厚生年金などのように、保険料に企業負担がある場合もあります。健康保険や厚生年金では、私たちが払う保険料以上に、企業が負担しているのです。
それが給付にまわるわけですから、その意味でも給付は大きくなるわけです。以上のようなことを考えると、10の保険料に対して10より大きい給付があると言えるわけです。
もちろん国民全体としてと言う話ですから、一人一人で見ると支払った保険料よりも給付が大きい人もいれば、給付よりも保険料の方が大きい人はいますけどね。それでも、全体としてみれば、私たちに有利な制度になっているわけです。
それに、一人一人で見た場合に有利不利があるのは、生命保険も同じですしね。
一方、生命保険の掛け捨て保険の場合は、全体で見れば、支払った保険料10に対して受け取る保険金や給付は5から8くらいでしょうか。給付されない2から5はどこに行っているかと言うと、生命保険会社の取り分になるわけです。
もちろん、全部が全部、保険会社の利益になるわけではありませんけどね。
生命保険というのは民間の保険ですから、保険を運営する費用は保険料から負担されます。それを考慮すると、支払った保険料よりも受け取る保険金の方が圧倒的に小さくなるのです。
その結果、保険会社や商品によって差はありますが、何割かが抜かれてから保険金の支払にまわるのです。これを付加保険料と言います。まあ、要するに、手数料を取られるわけです。
社会保険の保険料の支払をやめて民間の保険で対処すると言うのはナンセンス
社会保険が批判されると、「社会保険なんてやめてしまって、民間の保険で対処すれば良い」なんて極端なことを言い出す人がいます。しかし上のような関係を見ると、暴論であることが良くわかります。
確かに社会保険には、不公平な部分も存在するのが事実です。例えば健康保険だと、高額所得者は負担が大きくなる傾向にあります。ですから個人の損得という意味だと、損をする可能性も大きいでしょう。あるいは現在の公的な年金制度だと、現在の現役世代は、今年金を貰っている世代に比べ、給付の面で割を食う可能性もありそうです。
ですから、もちろん、社会保険が完璧な制度だなんていうつもりは無いのです。しかし、マスコミの空気にのまれて、公的な保険なんてやめてしまおうだなんて考えるのは危険なのです。全体として見ればプラスであるという部分を忘れてはいけません。
特に、比較的所得が小さい層には、社会保険はとても有利な制度です。その層にいる人たちが、保険料を払っていないのは、いくらなんでももったいない話だと思います。
- 厳密に言うと、生存保険と死亡保険を組み合わせた「生死混合保険」という保険ですが、ここでは深入りは避けましょう。 [↩]
- 興味があれば、例えば、ウィキペディアで「保険金不払い事件」のページでもチェックしてみてください。本当に酷いことをしています。 [↩]
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