銀行で積極的に勧められた変額保険は何故姿を消したのか| 投資信託は売られているのにね

別のページでも少し触れましたが、最近は変額保険を扱っていない保険会社が多いようです。でも、これって、かなり不思議なことに思えてなりません。

というのも、変額保険と比較的似た商品である投資信託は、銀行などを使って積極的に売られているのです。投資信託の販売を真似して、変額保険を作り銀行などで売ってもらわないのでしょうか。

変額保険はそれなりに使える保険です

変額保険を貯蓄のための商品と考えた場合、全く問題が無いとも思いません。正直なところ、手数料など、多少気になる部分もあります。

それでも、終身保険などの固定金利の保険と比べると、利用価値がある貯蓄商品だと思うんですよね。今のように国債の金利が低い時期だと、特にそうです。金利が低い時期には、株式などを使って運用した方がパフォーマンスが良いと考えられるのです。

単純に株式に投資をするというだけなら、投資信託を使っても良いですし、株式を直接買っても良いでしょう。ただ、変額保険は同時に相続対策ができるというメリットもあるのです。

ちなみに、何かの規制などがあって銀行で売れないというわけでもありません。そもそも、何年か前には銀行で積極的に販売していましたしね。特に規制が入ったという話も聞きません。

撤退のきっかけはリーマンショック?

生命保険会社が変額保険から撤退したきっかけは、リーマンショックです。リーマンショックで株価が下がったのをきっかけに、生命保険会社が相次いで撤退したようです。

例えばウィキペディアには、次のように書かれていました。

2008年の世界金融危機(リーマンショック)による株安・円高により運用資産の元本割れが続出したことで、ハートフォード生命保険など外資系の撤退やハイリスク型商品の募集停止などが相次いだ。

リーマンショックがきっかけで撤退なんて書かれると、一瞬、そんなものかなあと思ってしまいます。でも、冷静に考えると、この説明はちょっと変ですよね。

変額保険というのは、運用のリスクを契約者が負う保険です。リーマンショックで株価が下がろうと、本来は保険会社には関係のない話のはずなのです。

確かに、株価の大幅下落で、一時的に新規契約が取りにくくなる事はあるでしょう。でも、各社がそろって撤退してしまうような話だとは、到底思えないのです。保険会社から見れば、契約者の中でリスクを取った運用をしていた人が泣きをみてお終いという事です。

変額保険なのに元本保証をして損失を負った

確かに、生保各社が変額保険から撤退したのに、リーマンショックがかかわっていたのは事実です。しかし、リーマンショックによって株価が下がったからという事だけが理由では無いようです。

実は生保各社は、この当時、変額保険に元本保証をしていました。その元本保証が影響して、保険会社自身も損失を被っていたのです。2009年3月J-CASTニュースの記事から三井生命が撤退した経緯を引用してみましょう。

三井生命は、変額年金保険と変額終身保険の取り扱いを休止する。変額保険は、2002年秋以降は銀行窓口でも買えるようになった、生保の「成長分野」。それが、リーマン・ショック以降の金融危機で多額の損失計上を負うことになった。変額保険の「撤退」表明は、生保大手では初めてだ。

変額保険は、契約者から預かった保険料を「特別勘定」で運用して、その成績で受け取る保険金額が変わる商品なので、株価下落などによって元本割れが生じるリスクがある。生保は過去に運用で生じた損失を契約者に負わせて問題になったこともある。その反省もあって、現在普及しているタイプの変額保険は、最低限の保険金額を生保が保証するルールを設けている商品が多い。つまり、生保が損失を負うかたちになっている。

そのため、生保は将来支払うべき保険金を積み立てている。責任準備金や価格変動準備金といわれるもので、変額保険の「元本保証」による積立金の負担が、生保経営に重く圧しかかってもいる。三井生命が08年4-12月期決算で1060億円の最終赤字を計上したのも、こうした変額保険の責任準備金の負担が足を引っ張ったとされる。1

このように、契約者だけでなく、三井生命もリスクを負うような設計になっていたわけです。そして、リーマンショックで株価が大暴落したために、実際に損失を追ってしまったという事ですね。他社も似たような状況だったはずです。

さらに悪いことに、株価が下がって損失が出たことで、販売窓口だった銀行にクレームをつける人も多かったようですね。

ある地銀関係者は、「08年秋以降、変額保険に関する問い合わせやクレームは少なくない」と明かす。販売時にリスク説明はきちんとしているが、「実際に損しているというと、気分がよくないこともあって説明を求めるケースが目立つ」という。そんなこともあって、これまで主力商品だった変額保険の販売を手控えている。

さすがに最近だと、株価が下がって証券会社に文句を言いに行くような投資家はあまりいないはずです。でも、安全なイメージの生命保険だと、文句を言いたくなるような人も多いのでしょうね。

実際に販売窓口になった銀行などから十分な説明がされていても、保険で損をするなんてありえない話だと思ってしまうのでしょう。まあ、そういう人が一部いても、分からない話ではありません。特に変額保険の場合、運用次第では大きく損をすることもありますから。

リーマンショックの結果、銀行がこれにビビッて販売に消極的になるという事があったようです。独自の販売チャンネルをもたない外資系の生保は、変額保険から手を引かざるを得ないという事だったようです。

で、このような事があってから10年近くたった現在、変額保険を扱う生命保険会社が激減してしまったというわけなのです。

まあ、投資信託のようなリスク商品に一部とは言え元本保証をつけてしまったわけです。保険会社が悪いんだと思いますけどね。

そのおかげで多少でもマトモな貯蓄型の保険がなくなるのは、私たちにとっても不幸な事です。はっきりって、とばっちりです。


  1. 生保「変額保険」に急ブレーキ 「撤退」や品揃え見直し
    J-CASTニュース 2009年3月23日 []

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