日本で最大級の健康保険組合である「人材派遣健康保険組合」が解散を決めたのだそうです。一部のメディアでは、意外と大きく取り上げられています。
でも、健康保険組合が解散すると、なにか問題が有るのでしょうか。そして、そもそも健康保険組合って何なのでしょうか。
ちょっと確認してみましょう。
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人材派遣健康保険組合が解散
国内で2番目とも最大とも言われる健康保険組合1 が、解散することを決めたのだそうです。「人材派遣健康保険組合」という健康保険組合で、約51万人の加入者がいるそうです。
名前からわかるように、派遣社員の健康保険組合です。派遣社員の多くが加入していると思えば、規模が大きいのは不思議ではありませんね。
ところで、そもそも健康保険組合というのは、一体どんな組織なのでしょうか。そして、組合が解散すると、何か不利益は有るのでしょうか。
確認してみましょう。
「組合健保」と「協会けんぽ」
そもそも、健康保険というのは、会社員のための公的な医療保険です。個人事業主は、国民健康保険という医療保険制度を使っています。
この2つには、かなりの部分で同様の給付があります。ただ、いくつか決定的にことなる点もあります。
まあ、今回の話とは直接関係が無いので、深入りは避けておきましょう。とりあえず、今回話題になっているのは、会社員が入る健康保険の話です。
組合健保
さて、健康保険は保険ですから、「保険者」がいます。保険者というのは、保険料を決めたり、保険料を集めたり、保険金を給付したりする人のことですね。要するに、保険の運営をする人です。
健康保険が特徴的なのは、公的年金制度のように、保険者が一元化されているわけではないという点です。健康保険組合という組合を自分たちで作り、そこが保険者をやっています。
大きな企業だと、一つの企業だけで健康保険組合を作ることもあります。また、同じ業種の会社や、グループ会社が集まって健康保険組合を作っているケースもあります。
このように、独自の健康保険組合を作って健康保険の実務を行う仕組みは、「組合健保」と呼ばれます。組合健保には、ある程度の自由度が与えられています。
つまり、自分たちの健康保険をある程度自主的に運営できるわけです。もちろん、法律の制約がありますから、自由にできる範囲は限定的ですけどね。
今回話題になっている人材派遣健康組合というのは、その健康保険組合の一つです。健康保険の保険者をやっていた組合を解散するというニュースなわけですね。
協会けんぽ
これに対して、健康保険組合を持たない企業というのもあります。というか、企業の規模が小さいと、自分たちで組合を作るのは不可能ですよね。
そういう場合には、全国健康保険協会が保険者になります。これを「協会けんぽ」と言ったりします。
今回ニュースになった人材派遣健康保険組合の解散により、人材派遣健康保険組合に入っていた被保険者は、この協会けんぽに移ることになります。
協会けんぽに移ると不利益は有るのか
仮に健康保険組合が解散しても、国が定める健康保険という大きな枠組みから外れるわけではありません。ですから、被保険者が大きな不利益を被るという事はないでしょう。
ただ、組合健保の方が条件が有利なケースも多いので、加入者の負担が多少は増える可能性はあります。組合健保は、独自の給付があったり、保険料が安かったりするケースもあるのです。
ちなみに、健保組合ごとの独自の給付を、付加給付と言います。(付加休符は、「附加給付」あるいは「法定外給付」とも言います。)
協会けんぽに移ると、この付加給付が無くなり、保険料の従業員負担が増える可能性があるわけですね。この部分は負担増になります。
ただ、「人材派遣健康保険組合」に関しては、入っていると特に有利という点も無かったようです。ざっくりとホームページをチェックしてみただけの印象ですけど。
また、保険料の負担割合も協会けんぽに比べて特に有利ということはありませんでした。
保険料率が上がるので、若干保険料負担は増えるかもしれませんけどね。不利益はその程度です。
有利な組合とそうでない組合が有る
このように、組合健保がどの程度有利なのかは、組合ごとに異なります。組合ごとに上乗せの給付があったりするので、一概に言えないのです。被保険者が負担する保険料も、組合によって異なります。
ですから、詳しく調べてみないと、協会けんぽに移った時に、どの程度負担が増えるかはわかりません。ケース・バイ・ケースということですね。
ただ、協会けんぽの給付は国が決める最低ラインだと考えていいでしょう。健康保険組合に移ると、負担が増えることはあっても、減ることは無いはずです。
健康保険組合を解散する理由は
ところで人材派遣健康保険組合は、何で解散するのでしょうか。その理由ですが、朝日新聞は次のように報じています。
企業と従業員が折半する保険料率が9・7%まで上昇、今後見込まれるさらなる負担増を避ける狙いがある。2
保険料率というのは、標準報酬月額に対して何%の保険料を取るかという割合のことです。標準報酬月額というのは、おおよそ給与の額だと考えてください。
例えば保険料率が10%で、標準報酬月額が30万円の人は、月々3万円の保険料を納めることになります。ただ、この保険料は従業員だけで負担するわけではなく、会社の負担と合わせて3万円を納めるということになります。
ちなみに、人材派遣健康保険組合の場合は、従業員と会社の負担割合は同じです。つまり、保険料率が10%になると、従業員は標準報酬月額の5%に相当する保険料を納めることになります。
まあ、納めると言っても、給与天引きなのですけどね。何にしても、保険料率が上がると、保険料は増えるわけです。
この保険料率が協会けんぽと大差が無くなったということは、会社としては自前の健康保険組合を保つ意味があまりないことになります。特に有利でなければ、自前で持っても仕方がないですよね。
それどころか、今後保険料率は上昇する傾向に有るでしょう。というのも、派遣ではたらく人の年齢も上がっているからです。
以前は、派遣社員というのは、比較的年齢が低い人が多かったはずです。若い人は病気になりづらいですから、保険料率を下げても必要な給付をすることが可能でした。
年齢が高い被保険者が多いということになると、健康保険組合の負担は増えることになります。それは、当然ですが、保険料率のアップにつながるわけですね。
となると、会社としては、協会けんぽに入ったほうが有利ということになってしまうのです。組合としても、「こういう状況なら解散しましょう」と考えるのです。
この流れは広がりそう
こういう減少は、当然ながら、他の業界でも見られるでしょうね。
例えば、以前はSEというと若い人の仕事の代名詞でした。SE35歳限界説なんていうのもありました。
ということは、情報処理の業界は若い人が多いことになります。健康保険組合を持っているとしたら保険料率は低かったはずです。
しかし、少子高齢化が進むと、そんなことも言っていられません。当然ですが、労働者の年齢が上がれば、健康保険組合の保険料率も上がっていく可能性が大きいわけです。
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