【健康保険と厚生年金】標準報酬月額の知識は必須です

社会保険(健康保険と厚生年金)について理解するためには、「給与と保険料」「給与と給付」の関係を知る必要があります。そして、そのためには、標準報酬月額および標準賞与額という考え方を理解しないといけません。いわば、必須の知識です。

まあ、細かい話と言えば細かい話なんですけどね。お金が直接絡む話なので、考え方くらいは理解しておいた方が良いでしょう。

標準報酬月額って何?

健康保険や厚生年金の保険料は、標準報酬月額という金額を元に決定されます。

おおよそのイメージとしては、標準報酬月額は最近の月給の平均に近いものだと理解しておくと良いでしょう。次のような関係が有るわけですね。

標準報酬月額 ≒ 最近の月給の平均

それでは標準報酬月額というのは、どうやって求めるのでしょうか。順を追って説明しましょう。

報酬月額を求める

標準報酬月額について計算するには、まず、報酬月額を計算する必要があります。といっても、報酬月額自体は、それほど難しいものではありません。

4月から6月の報酬の平均を計算します。これを報酬月額と言います。大雑把に言うと、これだけのことです。(細かいことを言うと、かなり色々ありますが)

ちなみに、この報酬月額には、給与だけでなく、通勤手当などの一部の手当も含まれます。ですから、一般的に、給与よりも報酬月額の方が少し大きくなると考えていいでしょう。

つまり、おおよそ次のような関係になっていると考えてください。

報酬月額 ≧ 毎月の給料

あくまでイメージですけど、こんな関係があります。(これも厳密に言うと、こうでないケースも沢山あります)

報酬月額から標準報酬月額が決まる

この報酬月額を使って、標準報酬月額を決定します。

まず、標準報酬月額についてですが、標準報酬月額はいくつかの等級に分かれています。健康保険なら50等級に分かれていますし、厚生年金は31等級あります。

そして、どの等級に該当するかは、報酬月額で決まります。例えば、報酬月額が30万5000円だとしたら、健康保険の22等級に該当します。厚生年金だと等級が異なり、19等級です。

そして、各等級ごとに、標準報酬月額が決まっています。例えば、健康保険の22等級だったら、30万円と定められています。これは一覧表になているので、報酬月額さえわかれば標準報酬月額はすぐにわかります。

標準報酬月額を求める手順

以上をまとめると、標準報酬月額を求めるには、次のような手順で考えて行けば良いわけです。

報酬月額を計算 → 対応する等級を確定 → 標準報酬月額が決定

このプロセス自体は、それほど難しくありません。難しいい部分が有るとすれば、手当が報酬に含まれるのか否かという判断でしょうか。

あとは、一ヶ月の勤務日数が短い場合には、ちょっと特殊な処理が必要です。まあ、ここでは割愛しましょう。

標準報酬月額から社会保険の保険料が決まる

そして、この標準報酬月額をもとに健康保険や厚生年金の保険料が決まります。保険料率というのがあって、標準報酬月額にそれをかけると、保険料の金額が決まります。

例えば、東京で協会けんぽに入っている人で、介護保険の保険料を払っていない場合を考えてみましょう。上で挙げた例のように、標準報酬月額を30万円とします。

この人の場合は、標準報酬月額の30万円に保険料率9.90%1 をかけると、月額2万9700円の健康保険の保険料が発生する事がわかります。協会けんぽの場合は会社と折半なので、個人負担は半額の1万4850円となります。2

このように標準報酬月額と保険料率を使って、健康保険や厚生年金の保険料が決定するわけです。ちなみに、健康保険組合に入っている場合は、組合けんぽとは違う保険料率が適用されます。

あるいは、健康保険の傷病手当金の給付額なども、標準報酬月額を元に決まります。老齢厚生年金の額も、標準報酬月額が関係します。

このように、標準報酬月額は、年金制度においてとても重要なものなのです。

参考:健康保険協会の標準報酬月額の説明は?

ちなみに、健康保険協会の標準報酬月額の説明は、次のような感じです。

  • 参考:標準報酬月額・標準賞与額とは?

定時決定と随時改定

上に書いたように、標準報酬月額は、4月から6月の報酬を平均して決めるのが基本です。7月1日の時点で使用している被保険者に対して計算することになっています。

そして、この結果が保険料に反映されるのは、その年の9月から翌年の8月までです。つまり、手続きに時間がかかるので、多少の時差があります。

しかし、1年の中で、突然給料が増えたり減ったりすることってありますよね。

分かりやすいのは昇進して増えるケースでしょうか。あるいは、介護の都合で労働時間を短くしてもらったとか言う理由で、給与が減るケースも有るでしょう。

こういう場合は、元の標準報酬月額で保険料を計算するのはふさわしくありません。そういうケースには、随時改定というのを行います。

ちなみに、残業などが一時的に増えて給料が増えたという場合は、随時改定の対象にはなりません。固定的に賃金が変動した場合に限り、随時改定が行われます。

標準報酬日額

年金に関してよく出てくる用語に、「標準報酬日額」というのもあります。標準報酬日額は、標準報酬月額を30で割ったものです。定義自体は、標準報酬月額さえわかっていれば、とても簡単です。

標準報酬日額は法律用語ではない

ちなみに、標準報酬月額は法律用語です。例えば、健康保険法などの条文で使われています。

その一方で、標準報酬日額というのは、慣例的に使われている言葉です。ですから、正確な情報を探そうと思うと、大変苦労します。法律の条文などは見つけられないわけですからね。

実際の法律の条文では、「標準報酬月額を平均した額の三十分の一に相当する額」などと書かれており、標準報酬日額という言い方はしていません。

専門家と話すときには、標準報酬日額と言えば話は通じます。また、「標準報酬月額の30分の1」と言うよりも、標準報酬日額と言う方が簡単です。その意味での利便性はあります。

ただ官公庁の資料などを探すときには、その単語はでてきません。ですから、法律で定められたような用語だと思うと、意外と困ることが有るわけです。

標準賞与額

ちなみに、賞与は標準報酬月額とは別枠で処理されます。実際の賞与から標準賞与額という金額を決定します。その標準賞与額を元に、賞与に対する保険料が決定されるのです。

ただ、賞与の回数が年4回以上の場合は、標準報酬月額として計算されます。ということは、四半期ごとに賞与を出す会社があるとすれば、その会社の標準報酬月額が増えて、標準賞与額がゼロになるというわけです。

賞与として渡されたお金が、標準賞与額に入るのか標準報酬月額に入るのかは、単なる手続き上の話だけではありまえん。給付にも影響する部分です。

例えば健康保険の傷病手当金だと、標準報酬月額の30分の1の金額の3分の2がもらえる事になっています。ということは、標準報酬月額大きいほうが、給付される金額も大きくなるわけです。

まあ、会社員の側からはどうすることも出来ませんけどね。経営サイドにいる人は従業員のために、少し考えてみてもいいかもしれません。

定年後の再雇用で給料が下がるケースはどうなる?

上で、給料が大きく変わったときは、随時改定という手続きが取られることをご紹介しました。定時決定の時期以外でも、標準報酬月額を計算し直すということをするのです。

定年退職でも随時改定があるのか?

ところで、給料が大きく下がるケースと言えば、定年後に嘱託などの形で再雇用されるというケースが思い浮かびます。この場合は、健康保険や厚生年金の保険料はどうなるのでしょうか。

繰り返しますが、毎月の報酬が固定的に大きく変動すると、随時改定という手続きが取られます。定時決定のタイミングでは無くても、変動した給料に応じた標準報酬に変更されるわけです。

標準報酬月額が変更されるという事は、毎月の保険料も、それに合わせて増えたり減ったりするわけです。

それでは、定年退職の場合も、随時改定が行われるのでしょうか。固定的に大きい変動があるわけですから、随時改定があると考えるのが自然ですよね。給料が半分になったりします。

随時改定だと時間がかかりすぎる

ただ、随時改定では、少し困ったことが起こります。随時改定の金額が実際適用されるには、再雇用の5か月目からになるのです。

新しい報酬を計算するのに時間がかかったりするので、タイムラグが生じるわけですね。ですから、通常の随時改定と同じ手続きを取ったとすると、再雇用後しばらくは以前の高い保険料を払わないといけないわけです。

これはかなり困ったことです。と言うのも再雇用の場合は、以前よりかなり給料が小さくなりますから。保険料の負担はかなり大きくなってしまいます。

同日得喪という処理をする

これを回避するために、同日得喪という仕組みがあります。簡単に言うと、再雇用のタイミングで新たに雇用されたものとみなして標準報酬月額が決定されるという仕組みです。

つまり、再雇用した月から、再雇用した低い給料をもとに健康保険や厚生年金の保険料が決まるわけです。これにより、月々の保険料負担はだいぶ楽になるでしょう。

ちなみに同日得喪が使えるのは、60歳以上で定年を迎える人の再雇用に限られます。また、事業所の手続きが必要なので、忘れないようにすることが大事です。


  1. 平成30年4月分からの東京の保険料率です。 []
  2. あ、ちなみに、東京でと書いたのには理由があります。組合けんぽの健康保険の保険料率は、都道府県によって差があるのです。それほど大きな差では無いのですけどね。ただ、単純に都会の保険料率が高くて地方が安いと言うようなことでも無いようです。 []

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