健康保険というのは、国が作った保険です。それにもかかわらず、人によって有利不利があるようです。
例えば、同じ給料でも、保険料が大きく違う事があるようです。40万円の月給の人で、月に8,000円も保険料に差があるケースがあるようですね。
何でこんな事が起こるのでしょうか。
Contents
健康保険の保険料はどうやって決まる?
健康保険は会社員の公的な医療保険です。その保険料は、どのように決まっているのでしょうか。
「標準報酬月額 × 保険料率 × 1/2」が基本
基本的には、健康保険の保険料というのは、標準報酬月額に保険料率というのを掛けた金額です。これが保険料の月額ですね。
この月額の保険料は、全て従業員の自己負担ではありません。組合けんぽだったら、従業員と事業所で折半します。
つまり、月額の保険料は、次のように決まります。組合けんぽの場合ですけど。
保険料(月額の従業員負担分) = 標準報酬月額 × 保険料率 × 1/2
標準報酬月額とは
ちなみに、標準報酬月額というのは、おおよそ給料に通勤手当といった手当の一部を加えて求められる金額だと思ってください。
「給料 + 一部手当」のことを報酬月額と呼ぶことがあります。この報酬月額が決まると、標準報酬月額が決まるという流れです。
まあ、おおよそ、次のような金額だと思っておけば大きな間違いはありません。
標準報酬月額 ≒ 給料 + 一部手当
ということは、健康保険の保険料というのは、給料を含めた報酬月額と、保険料率で決まるわけです。比較的シンプルな仕組みなんですね。
国民健康保険は少し複雑
余談ですが、これが国民健康保険になると、計算式がかなり複雑になります。国民健康保険は、主に個人事業主などが入る公的な医療保険制度のことです。
計算に必要な数字を入力すると、計算結果が出力されるサイトも有るようですけどね。正確な計算式を理解しようと思うと、ちょっと努力がいります。
健康保険組合によって保険料率や負担割合が違う
計算式こそ非常に簡単ですが、実は、一人一人の健康保険の保険料を把握するのは意外と大変です。給料が分かっても、それだけでは正確は保険料はわからないのです。
上に書いたように、手当が報酬に含まれるというのも、その一つの理由です。給料だけでは分からないわけですね。
また、どの手当が報酬に含まれて、どの手当が含まれないかの区分も、結構難しいところです。厳密に計算しようと思うと、慣れていない人はかなり悩むはずです。
ただ、それだけでなく、他にも保険料を把握するのが難しい理由があります。
保険料率は健康保険組合によって違う
給料から保険料が分からない一つの理由は、保険料率が健康保険組合によって違うからです。
健康保険の特徴は、健康保険組合または全国健康保険協会が保険者をやっているという点です。そして、健康保険組合というのは、全国に沢山存在します。
また、健康保険協会が保険者をやっている健康保険は「協会けんぽ」と呼ばれます。健康保険組合を作っていない企業の従業員が入るのが、協会けんぽです。
ちなみに保険者というのは、保険料を集めたり、保険給付をしている組織のことですね。一般的な言葉でいうと、運営者だと理解していいでしょう。
つまり、健康保険という仕組み自体は健康保険法という法律で今行っていますが、運営自体は会社が作った健康保険組合に任されている部分が多いのです。実は、保険料率もその一つです。
保険料率が違えば、当然ですが、報酬が同じでも保険料が違いますよね。これが、給料から保険料を把握するのが難しいポイントの1つ目です。
具体例は後述しますが、協会けんぽの保険料率が10%前後なのに対して、8%を割るような健康保険組合もありますからね。結構、保険料が違うのです。
従業員と企業の負担割合が違う
給料から保険料を把握するのが難しいもう一つの理由が、従業員と企業の負担割合が組合によって違う点です。
とりあえず、協会けんぽのように、保険料は企業と従業員で折半というところが一番多いのかもしれません。
例えば、標準報酬月額が40万円で保険料率が10%だとしましょう。そうすると、保険料は全部で4万円になります。企業と従業員が折半なら、従業員の負担分は半分の2万円ということになるわけです。
ところが、保険料率は同じでも、従業員の負担割合が3割で企業が7割なら、従業員負担分は1万2000円になります。つまり、折半しているところと8,000円も違うわけですね。
これが毎月の話ですから、長期的に考えると結構大きいですよね。1年でも9万6000円の差になりますから。終身雇用だとすると、数百万円単位の大きな話です。
この上、上に書いたように、保険料率も違うわけですからね。差はさらに大きくなります。
実際の保険料率と負担割合はどうなっている
それでは、実際の健康保険の保険料率と負担割はどうなっているのでしょうか。実際の健康保険組合と協会けんぽの例をチェックしてみましょう。
いくつかの組合のサイトなどから、数字を拾ってみました。何れも調整保険料率を含む数字です。
あ、ちなみに、この数字は変更されることがあるのでご注意ください。あくまで、これを書いている時点での情報です。
● NTT健康保険組合
健康保険料率:(全体)9.27%/(従業員)4.56%/(事業主)4.71%
介護保険料率:(全体)1.48%/(従業員)0.74% 0.74%
● トヨタ自動車健康保険組合
健康保険料率:(全体)8.3%/(従業員)3.00%/(事業主)5.30%
介護保険料率:(全体)1.08%/(従業員)0.54%/(事業主)0.54%
● 日本金型工業健康保険組合
健康保険料率:(全体)9.85%/(従業員)49.25%/(事業主)49.25%
介護保険料率:(全体)1.62%/(従業員)0.81%/(事業主)0.81%
● 全農健康保険組合
健康保険料率:(全体)10.0%/(従業員)4.370%/(事業主)5.63%
介護保険料率:(全体)1.68%/(従業員)0.8.4%/(事業主)0.84%
● 三井住友海上健康保険組合
健康保険料率:(全体)7.8%/(従業員)2.9%/(事業主)4.9%
介護保険料率:(全体)1.32%/(従業員)0.66%/(事業主)0.66%
● 参考:組合けんぽ(東京都)
健康保険料率:(全体)9.90%/(従業員)4.95%/(事業主)4.95%
介護保険料率:(全体)1.147%/(従業員)0.5735%/(事業主)0.5735%
これを見ると分かるように、保険料率も保険料の負担割合も、組合によってかなり違うことがわかります。特に負担割合は、かなり差が有るようですね。超がつくほどの大企業だと、福利厚生も充実しているという感じですね。
具体的に計算してみましょう
実際の保険料率を使って、具体的な保険料を計算してみましょう。
例えばAさんは標準報酬月額が40万円だったとします。そしてAさんは東京の人で、協会けんぽだったとしましょう。
この場合は、Aさんの月々の保険料は、40万円の4.95%となります。ということは、月々の保険料は1万9800円となるわけです。
次にBさんについてです。Bさんも標準報酬月額は40万円だとしましょう。そして、Bさんはトヨタ自動車の子会社の社員だとします。ということは、健康保険はトヨタ自動車健康保険組合に入ることになります。
トヨタ自動車健康保険組合の保険料は標準報酬月額の3.00%です。ということは、Bさんの健康保険の保険料は月に1万2000円となります。
ということは、協会けんぽとトヨタの健保組合では、報酬が同じ40万円でも保険料が8,000円も違うのです。やっぱり、これは、結構大きな差と言わざるを得ないでしょう。
保険料率が大きく違うのは何でだろう
従業員と企業の負担割合が違うのは、企業の福利厚生の一環だということで理解できます。企業側が従業員を手厚く遇したいと思えば、企業の負担を増やせば良いわけですよね。
これは簡単な話です。
それでは、保険料率が組合によって異なるのはなぜでしょうか。保険料率がさがるということは、健康保険組合に入ってくる保険料が減るということですよね。
それで健康保険はうまく回るのでしょうか。給付にまわるお金が足りなくなるのでは、本末転倒ですよね。
保険料が低くても大丈夫
保険料が低いところは、それなりに理由があって保険料を低く出来るようです。
まず、加入者に若い人が多いと、保険料は安くなる傾向があるようです。若い人が多ければ、当然ですが、病気にかかる人も少ないわけです。
病気になる人が少なければ、健康保険からの給付も少なくなります。ということは、入ってくる保険料も少なくて良いわけです。
もう一つが、従業員の平均給与が高い場合です。
まず、給料が高くても安くても、かかる医療費というのはそれほど違いませんよね。保健医療ですから、同じ治療を受けたら同じ料金を請求されるのが基本です。
給付する額が変わらないということは、保険料として支払う金額も、他の健康保険と同程度で良いわけです。ただ、給料の平均は高いわけですから、保険料を同水準にするなら、保険料率が小さくなるというわけですね。
上のリストを見ると分かるように、保険料率が低いところには、有名企業グループの健康保険組合が多いようです。ということは、給与水準が高いことが予想されるわけですね。
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