国民年金の被保険者(いわゆる加入者のこと)には3つのタイプがあります。どんなタイプがあり、どんな基準で振り分けられているのか、確認しておきましょう。
また、厚生年金の被保険者になるには、どのような条件が有るのでしょうか。こちらも重要なので、確認しておきましょう。
被保険者とは
国民年金や厚生年金の被保険者についてチェックする前に、被保険者とはなにかから確認しておきましょう。保険の分野に馴染みがない人にとっては、ちょっと難しい概念かもしれません。
その人(例えばAさんと呼びましょう)に保険事故が起こったら年金などが支払われる場合、Aさんの事を被保険者と言います。
被保険者が65歳まで生きると保険事故
この説明では分かりづらいと思うので、もう少し具体的に説明しましょう。
公的年金においては、一定の条件を満たした人が65歳に達すると、老齢年金が支払われます。例えばBさんが65歳になって、老齢年金をもらい始めたとしましょう。
このケースでは、Bさんが65歳になることが保険事故なのです。そして、Bさんが65歳になることが保険事故とみなされるわけですから、Bさんが被保険者というわけです。
年金を払うかどうかの判断基準になっているわけですから、上の説明と合致していますよね。一般的な「事故」という単語とはイメージが違うので混乱するかもしれませんけどね。
被保険者は、一般的には、「加入者」だと思っておいても、大きな間違いはありません。しかし、正確に理解しよと思うと、このような話になるわけです。
被保険者に関してもう1例
もう一つ例を挙げてみましょう。
公的年金では、一定の条件を満たす人が亡くなると家族に遺族年金が支払われます。例えば、Cさんが亡くなって、Cさんの奥さんに遺族年金が給付されたとしましょう。
このケースでは、Cさんの死亡が保険事故です。そして、Cさんに対する保険事故で年金が支払われているので、Cさんが被保険者になります。
Cさんに対する保険事故で年金の給付が決まったわけですから、上の説明と合致します。
国民年金の被保険者
それでは、国民年金の被保険者についてみていきましょう。
国民年金の被保険者には3つのタイプがあります。それぞれ、第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者と呼ばれます。
それぞれの被保険者になる条件は、どう決まっているのでしょうか。第1号被保険者から順にみてみましょう。
第1号被保険者
国民年金法によると、第1号被保険者は、次のように定義されています。
日本国内に住所を有する二十歳以上六十歳未満の者であつて次号及び第三号のいずれにも該当しないもの
要するに、次の全ての条件を満たす人が第1号被保険者です。
- 第2号、第3号以外の人
- 20歳以上で60歳未満の人
- 日本国内に住んでいる人
この条件から考えると、例えば、日本に住む20歳の留学生は第1号被保険者になります。
学生は一般的には第2号や第3号被保険者ではありません(後述)。年齢の要件は大丈夫ですよね。そして日本に住んでいるわけです。
ということは、全ての条件を満たしています。国籍に関しては何も言っていませんから、外国籍でも全く問題はありません。
逆に、24歳で海外に留学している人は、原則的には国民年金の被保険者になりません。日本国内に住んでいないから、条件を満たせないのです。
ということは、例えば帰国後に身体障害者になっても、障害年金を受給できない可能性が大きいですし、将来の老齢年金の額が減る可能性もあります。
任意加入
実はこういう人(例えば、海外留学中など)には、希望すれば被保険者になる方法も有ります。任意加入と言って、自分の意思で加入する事が出来るのです。
日本年金機構のサイトによると、任意加入できるのは、次のような条件を満たす人です。1
- 日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の厚生年金、共済年金などの老齢年金を受けられる人
- 20歳以上65歳未満で海外に住んでいる日本人
- 日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の人
- 65歳以上70歳未満の方(但し、昭和40(1965)年4月1日以前生まれで、老齢基礎年金を受けるための受給資格期間を満たせない方に限ります。)
第2号被保険者
次に、第2号被保険者です。これも、国民年金法の条文から確認しておきましょう。
第2号被保険者は、次のような条件を満たす人たちです。
厚生年金保険の被保険者
非常に単純明快ですね。厚生年金の被保険者になっている人は、自動的に第2号被保険者になるということです。
この条文で注目したいのが、年齢に関する言及が全く無いという点です。ということは、18歳で高卒で会社員になっても、18歳から国民年金の被保険者になるということですね。
あるいは、60歳を超えて働いている人は、引き続き国民年金の被保険者になるということです。第1号被保険者が保険料を払い終わった年でも、被保険者の状態が続くということですね。
実は、満額の国民年金がもらえる状態でも、被保険者である期間が続くのです。ちょっと不思議ですね。
もっとも、実際には、年齢の上限だけは決まっています。65歳以降は国民年金の被保険者からは外れます。
年金機構のサイトでは、次のように説明されています。2
なお、65歳以上の被保険者、または共済組合の組合員で、老齢基礎・厚生年金、退職共済年金などの受給権がある人は第2号被保険者とはなりません。
働き続ける限り、70歳まで厚生年金の被保険者でいますが、65歳で国民年金の被保険者からは抜けるという考え方です。
また、第1号被保険者と違って、日本に住んでいるという条件はつきません。厚生年金の被保険者でさえあれば、海外で仕事をしていても国民年金の被保険者の地位は変わらないわけです。
逆に言うと、海外の企業に就職して海外で勤務をするような場合は、国民年金の被保険者ではなくなります。厚生年金の被保険者でも無くなりますからね。
当然ですが、第1号被保険者でもありません。日本国内に住所がありませんから。
こういう時は、上で説明したように、国民年金に任意加入するという手があります。
第3号被保険者
国民年金法によると、第3号被保険者というのは、次のような人を指します。
第二号被保険者の配偶者であつて主として第二号被保険者の収入により生計を維持するもの(第二号被保険者である者を除く。以下「被扶養配偶者」という。)のうち二十歳以上六十歳未満のもの
これもちょっと分かりづらいので、箇条書きにしてみましょう。以下のような条件を全て満たす人を、第3号被保険者と呼びます。
- 第2号被保険者の配偶者
- 第2号被保険者でない人
- 20歳以上60歳未満の人
主として第2号被保険者の収入により生計を維持する人(第2号被保険者に扶養される人)
厚生年金に入っている人に扶養されている夫または妻が、第3号被保険者になります。夫も第3号になるという点に注意が必要ですね。
また、第3号も年齢が決まっています。第1号被保険者と同様、20歳以上60歳未満という年齢制限がついています。
日本に住んでいるという条件はついていません。ですから、第3号被保険者の妻が、日本の会社に勤めている夫の海外出張についていっても、第3号被保険者のままということになります。
厚生年金の被保険者
次に、厚生年金の被保険者についてチェックしてみましょう。基本的に誰もが被保険者になる国民年金と違って、一定の条件を満たさないと被保険者になれません。
適用事業所と呼ばれる事業所で常時使用される70歳未満の人は、国籍などによらず厚生年金の被保険者となります。上に書いたように、65歳未満の人は、同時に国民年金の第2号被保険者となります。
ということは、適用事業所に勤めていない人は、被保険者にはなれません。また、「常時」使用されていない場合は、保険者にはなれません。細かい条件は省きますが、短期的な雇用ではダメなのです。
強制適用事業所
適用事業所には、強制適用事業所と任意適用事業所があります。
強制適用事業所というのは、次のどちらかの条件を満たす事業所です。
- 株式会社などの法人の事業所(事業主のみの場合を含む)
- 従業員が常時5人以上いる個人の事業所(農林漁業、サービス業などの場合を除く)
つまり、法人だったら、規模によらず事業所になります。社長一人の会社でも、適用事業所です。
また、個人の事業所でも、ある程度の人数を雇っていれば事業所になるわけですね。コンビニなどは、適用事業所になるケースが多いでしょう。実際に守られているかどうかは別として。
事業所って何?
ちなみに、事業所というのは一つの企業全体を指しているわけではありません。例えば、大手スーパーの一つの店舗は、そこ一つで事業所です。あるいは、大手自動車メーカーだったら、一つの工場が事業所になります。
あるいは、道を挟んで店舗と事務所が向かい合っていたら、この2つは別の事業所ということになります。厳密に言うと。
なかなか日常的に使わない概念なので、ちょっと分かりづらいかもしれません。
任意適用事業所
この他に、任意適用事業所というのがあるのですが、話が些末になってしまうのでここでは深入りりしないでおきましょう。
個人の事業所で常時働いている人が5人に満たなくても、適用事業所に出来る場合があります。
適用除外のケース
適用事業所に使用される人は厚生年金被保険者になります。ただ、一定の条件に当てはまる人は被保険者とされません。
基本的には、短期の仕事をしている人は、厚生年金の被保険者にはならないというのがルールです。それに関して、細かく色々とルールが決まっています。
例えば、次のような人は、厚生年金の被保険者にはなりません。
■ 日々雇い入れられる人
いわゆる日雇いのことですね。ただし、1か月を超えて引き続き使用されるようになった場合は、その日から被保険者となります。
たしかに1か月を超えたら、もう、日雇とは言えないですよね。
■ 2か月以内の期間を定めて使用される人
所定の期間を超えて引き続き使用されるようになった場合、その日から被保険者となります。例えば、3週間の予定で雇われていたのに、4週目からも働くことになったら、当初の期間が満了した次の日から被保険者となるわけです。
■ 所在地が一定しない事業所に使用される人
この場合は、いかなるケースでも被保険者とはなりません。
所在地が一定しない事業所というのは、例えばサーカスとかですかね。最近は、巡業するサーカスなんて有るのかなあ。あるいは、劇団などが該当するでしょうか。移動式の動物園なんかもそうですね。
この手の仕事に雇われている人は、間違いなくいわゆる常用の雇用ですよね。それなのに、何で厚生年金の被保険者にならないのでしょうか。
場所を点々とするので、行政が管理しきれないのでしょうか。そのくらいしか、理由は考えづらいですが。
■ 季節的業務(4か月以内)に使用される人
ちなみに、継続して4か月を超える予定で使用される場合は、当初から被保険者となります。「当初から」ということで、遡って厚生年金の被保険者だったことになります。
■ 臨時的事業の事業所(6か月以内)に使用される人
なにか、イベント的なもので雇われたようなケースでしょうか。何かの大きなイベントのスタッフだとありそうですよね。オリンピックとか。
この場合は、継続して6か月を超える予定で使用されるケースでは、当初から被保険者となります。
■ 短時間労働者
労働時間が短い人は、厚生年金の被保険者になりません。
1週間および1か月の所定労働時間が、常用雇用者の4分の3未満である場合は、短時間労働者とはみなされません。また、常用雇用者の4分の3未満でも、次の条件を全て満たす場合は、厚生年金の被保険者になります。
- 1週の所定労働時間が 20 時間以上であること。
- 雇用期間が継続して1年以上見込まれること。
- 月額賃金が 8.8 万円以上であること。
- 学生でないこと。
- 常時 500 人を超える被保険者を使用する企業(特定適用事業所)に勤めていること。
逆に言うと、常用雇用者の4分の3未満で、これらの条件を一つでも満たしていない場合は、厚生年金の被保険者には原則としてならないということですね。
被保険者の種類と保険料の関係
それでは、公的年金の被保険者ごとの保険料は、一体どうなっているのでしょうか。
国民年金の保険料を納めるのは?
まず、国民年金の保険料を納めているのは、国民年金の第1号被保険者だけです。実はそれ以外の人は、国民年金の保険料としては、お金を払っていません。
厚生年金の被保険者の保険料は国民年金の給付でも使われる
厚生年金の被保険者は、給料からの天引きという形で、厚生年金の保険料を納めています。つまり、国民年金の第2号保険者は、厚生年金の保険料を納めています。
ちなみに、この保険料の額は、給料におおよそ比例しています。
そして、厚生年金として集めた保険料の一部が、基礎年金の給付にまわっています。基礎年金というのは、おおよそ国民年金のことだと思ってください。
とにかく、厚生年金の保険料として納められたお金の一部は、最終的には国民年金の給付に使われているというのがポイントです。ですから、厚生年金の被保険者は、間接的な形で国民年金の保険料を納めているとも言えます。
第3号被保険者は色々と難しい
これに対して、国民年金の第3号被保険者は、国民年金の保険料を納めていません。国民年金の第3号被保険者は、厚生年金の被保険者でもないので、厚生年金の保険料も納めていません。
ということで、この第3号被保険者には、優遇し過ぎであるという批判が有るようです。
ただ、厚生年金から基礎年金に回されるお金には、第3号被保険者の分も含まれているのです。なぜそんな事が言えるかというと、第2号被保険者と第3号被保険者の人数を合算して、国民年金にまわるお金が決まっているからです。
つまり、厚生年金全体として考えると、第2号被保険者と第3号被保険者の国民年金の保険料を間接的に集めているということも出来ます。
ここで難しいのが、第3号被保険者の保険料は、第2号被保険者である夫(あるは妻)が払う保険料に上乗せされていると言い切れない点です。というのも、既婚未婚にかかわらず、第2号被保険者の保険料は同じ保険料率だからです。
第2号被保険者の配偶者である第3号被保険者の保険料を負担しているなら、既婚者の方が保険料率が高くないとおかしいですよね。でも、そうはなっていないのです。
とういことは、公的年金制度で一番割りを食っているのは、未婚の第2号被保険者かもしれませんね。この人たちは、別の社員の第3号被保険者の妻の保険料を、間接的に負担していることになります。
まあ、この件に限らず、日本の税制や社会保険は、独身にはちょっと不利に出来ているようですけど。
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