公的な遺族年金である遺族基礎年金と遺族厚生年金には、誰かしらが受給できるケースとそうでないケースがあります。せっかく公的年金制度に入っていても、誰も遺族年金をもらえないケースがあるのです。
どんなケースで受給可能で、どんなケースでは受給できないのでしょうか。生命保険について考える上で非常に重要なので、確認しておきましょう。
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公的遺族年金は受給できるケースと受給できないケースがある
公的年金には、生命保険の死亡保険の機能があります。死亡保険というのは、誰かが亡くなると保険金がもらえる仕組みのことですね。
公的年金の死亡保険の機能として代表的なのは、遺族厚生年金や遺族基礎年金の2つです。被保険者(保険に入っている人)が亡くなると、年金という形でお金が支払われます。
とは言え、一般的な生命保険会社が売っている死亡保険(終身保険や定期保険)とは違いもあります。公的年金の場合は年金として受け取りますし、被保険者が一定の条件を満たさないと受給する事ができません。
生命保険の死亡保険の場合は、基本的には、被保険者が保険期間中に亡くなれば保険金が支払われますからね。それと比べれば、公的年金の遺族年金はちょっと複雑なのです。
このページでは、公的年金の遺族年金が支払われる条件を確認してみましょう。将来設計をする上では、老齢年金と同じくらい大事な知識です。なにせ、遺族年金がわからないと、生命保険に入る必要が有るかどうか判断できないですからね。
遺族基礎年金の受給要件
遺族基礎年金を受給するには、亡くなった人と遺族のそれぞれに関して、一定の条件を満たす必要があります。
亡くなった人の条件
まずは、亡くなった人に関してです。基礎年金を受給するためには、次の2つの条件のうち、どちらかを満たす必要があります。1
- 被保険者が死亡したとき
- 老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある者が死亡したとき
ちなみに、この条件には但し書きがついています。単に被保険者や受給資格期間25年を満たせば良いのではなく、納付済期間が加入期間の3分の2以上無いと行けないのです。2
1つ目の条件の「被保険者が死亡したとき」というのは分かりやすいと思います。被保険者と言っているので、国民年金の保険料を納めている第1号被保険者だけでなく、厚生年金の被保険者でも有る第2号被保険者、第2号被保険者に扶養される配偶者である第3号被保険者も該当します。
ただ、2つ目の「老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある者が死亡したとき」というのは、公的年金制度に詳しくない人には難しく感じるでしょう。率直に言って、一般向けの情報としては、不親切な書き方だと思います。
■ 「老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある者」とは
「老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある者」というのは、より具体的にはどんな人なのでしょうか。
受給資格期間が25年以上あればいいわけなので、既に老齢基礎年金をもらっている人も対象になります。また、60歳以上の人で、まだ老齢年金をもらっていない人も対象です。
つまり、受給資格期間の要件さえ満たせば、ほとんど誰でも対象になるわけですね。被保険者に限らず、既に別の年金をもらっている人の死亡でも、他の年金を貰う予定だった人の死亡でも、遺族基礎年金の対象になります。
要するに、真面目に保険料を払っている(あるいは、払っていた)という部分だけが重要なわけです。
残された家族の条件
遺族基礎年金の受給は、残された家族にも一定の条件を課しています。というか、家族に対する条件の方が厳しいです。
日本年金機構のサイトによると、遺族基礎年金を受け取れるのは、次のうちのどちらかを満たす場合です。
- 死亡した者によって生計を維持されていた、子のある配偶者
- 死亡した者によって生計を維持されていた、子
条件を満たす配偶者がいれば、配偶者が受給します。条件を満たす配偶者がいない場合は、子供が受給することになります。
この説明からわかるように、遺族基礎年金を受け取るかどうかでは、子供がいるかというのが重要です。1つ目の配偶者が受給するケースでも、子供がいないと配偶者は受給することができません。
また、子供なら誰でも良いわけではありません。生計維持関係も重要ですし、それ以外にも次のような条件がついています。
- 18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子
- 20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子
要するに、子供が障害者で無い場合は、子供が18歳の3月までということですね。一般的なケースだと、高校卒業前の子供でないとダメということですね。
■ 子供が高校卒業までという判断は正しかったが
子供が高校を卒業するまでしか年金が払われないというのは、条件としては厳しすぎると感じる人もいるでしょう。しかし、実はこの条件は非常に妥当なものでした。
一般に、夫が亡くなって残された家族が困るのが、子供が独り立ちするまでの期間です。子供が自分で稼げるようになったら、妻一人なら自分自身で何とか出来ますからね。
その一番厳しい期間に一定の給付をするのが、遺族基礎年金というわけです。つまり、遺族基礎年金は、一番厳しい部分を支えてくれる制度というわけです。
ただ最近は、子供が大学に行くのが当たり前になっています。その意味では、遺族基礎年金の給付では少し短すぎるかもしれません。
ですから、子供が高校を卒業してから大学を卒業するまでの4年間に関しては、生命保険などを利用して自分でなんとかする必要があるかもしれません。
遺族厚生年金
次に、遺族厚生年金です。遺族厚生年金に関しては、遺族基礎年金よりは受給要件が緩くなっています。多くの人が受給できると考えていいでしょう。
亡くなった人の条件
まず、遺族厚生年金を受給できる、亡くなった人の条件を見てみましょう。日本年金機構のサイトでは、次のように説明されています。
- 被保険者が死亡したとき
- 被保険者期間中の傷病がもとで初診の日から5年以内に死亡したとき
- 老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある者が死亡したとき
- 1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けられる者が死亡したとき
最初の2つに関しては、遺族基礎年金と同様の、保険料納付要件があります。3
まず、亡くなった時点や亡くなる原因となった傷病の初診日の時点で厚生年金の被保険者でありさえすれば、比較的話は簡単です。保険料納付要件を満たしてさえいれば、遺族厚生年金は受給出来ることになります。
実はこれだけでなく、既に厚生年金の被保険者でなくても、遺族厚生年金をもらえるケースがあるのです。それが、「老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上」という条件ですね。
この条件があれば、既に会社を辞めている人が亡くなった場合でも、遺族厚生年金がもらえるわけですね。さらに言うと、既に65歳以上で年金を受給していても、遺族厚生年金をもらえるわけです。
例えば、22歳で大卒で会社に入り、47歳で自営業になったとします。この人が63歳で亡くなると、遺族厚生年金がもらえるわけですね。
十年以上保険料を払っていないのに遺族厚生年金をもらえるって、なんだかちょっと変な感じもします。まあ、
残された家族の条件
それでは、次に、亡くなった人の家族に対する条件です。
遺族基礎年金ではこの条件が厳しいために、受給できる人は非常に限られていました。基本的に、高校卒業する前の子供がいるかどうかで判断されます。
しかし、遺族厚生年金では、この条件はかなり緩くなっています。日本年金機構のサイトによると、次のように説明されています。
- 死亡した者によって生計を維持されていた、妻(30歳未満の子のない妻は、5年間の有期給付)
- 死亡した者によって生計を維持されていた、子、孫(18歳到達年度の年度末を経過していない者または20歳未満で障害年金の障害等級1・2級の者)
- 死亡した者によって生計を維持されていた、55歳以上の夫、父母、祖父母(支給開始は60歳から。ただし、夫は遺族基礎年金を受給中の場合に限り、遺族厚生年金も合わせて受給できる。)
この書き方だと分かりづらいですが、遺族厚生年金の場合は、子供がいない妻も受給できるのです。年齢が30歳未満の場合は有期という条件は付きますが、それでも何らかの受給は可能です。
また、それだけではなく、夫や父母なども、一定の条件を満たせば受給可能です。つまり、遺族厚生年金の場合は、誰かしらが受給できる可能性が大きい仕組みであると考えられます。
遺族基礎年金の要件の厳しさは実際の受給者数をみるとわかる
ここまで見てきたように、遺族厚生年金というのは、比較的受け取る人が多い年金です。現在の被保険者か、長い期間(25年以上)被保険者だった人が亡くなれば、高い確率で遺族厚生年金を貰えるからです。
全てのケースで遺族厚生年金が支払われるわけではありません。でも、子供がいないと絶対にもらえない遺族基礎年金に比べると、受給要件は遥かにゆるいのです。
このことを、実際の数字を使って確認してみましょう。
「平成28年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」という資料によると、平成28年度の遺族基礎年金の受給者数は10万人なのだそうです。
基礎年金の全受給者数が3,386万人なので、遺族年金の受給者は0.3%ほどしかいないわけです。
これに対して、平成28年度の遺族厚生年金の受給者4 は、576万人います。全受給者が3,626万人なので、全受給者のうちの15.9%が遺族厚生年金を受給していることになります。
遺族基礎年金よりも遺族厚生年金が受給しやすいことが、この数字からも一目瞭然でわかりますね。
- 遺族基礎年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)| 日本年金機構 [↩]
- より詳しく書くと、次のような条件があります。
死亡した者について、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む。)が加入期間の3分の2以上あること。(平成38年4月1日前の場合は死亡日に65歳未満であれば、死亡日の属する月の前々月までの1年間の保険料を納付しなければならない期間のうちに、保険料の滞納がなければ受けられます。) [↩]
- 具体的には、次のように説明されています。
遺族基礎年金と同様、死亡した者について、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む。)が国民年金加入期間の3分の2以上あること。
※ただし平成38年4月1日前の場合は死亡日に65歳未満であれば、死亡日の属する月の前々月までの1年間の保険料を納付しなければならない期間のうちに、保険料の滞納がなければ受けられます。 [↩] - ただし、民間企業の会社員などに限ります。共済組合と厚生年金は一つになりましたが、公務員などを含んだ統計は、まだ整備されていないようです。 [↩]
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