‘社会保険の基礎知識’ カテゴリーのアーカイブ

公的年金や公的健康保険の保険者に関する基礎知識| 社会保険は誰が運営しているの?

2018年10月31日 水曜日

社会保険というのは、国が作った保険の仕組みのことを指します。しかし、保険者(運営者)は、必ずしも国というわけでは無いようです。どんなところが保険者なのか、確認してみましょう。

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公的年金(国民年金・厚生年金)の加算と経過措置の基礎知識

2018年10月22日 月曜日

公的年金の給付の基本を理解するのは、実は非常に簡単です。6パターンさえ覚えておけば、どんな給付があるかはわかるからです。

全ての国民が入るのが原則の国民年金なら、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金の3つしかありません。会社員が入る厚生年金でも、老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金の3つだけです。

ですから、この6パターンだけ理解しておけば、公的年金の給付に関する一通りの知識は得られることになります。

経過措置や加算が難しくしている

しかし実際には、公的年金の給付は非常に複雑な体系をしています。はっきり言って、嫌がらせのような難解さです。

何でそんな複雑なのかと言うと、様々な経過措置や加算があるからです。年金額を計算する時には、それらも考慮しないと行けないのです。

しかも、これらの加算や経過措置の金額が、意外と大きいことも有るのです。ですから、細かい話だと無視をするわけにもいきません。

もちろん、年金の専門家でもない人が、これらの仕組みを完璧に理解する必要はありません。ただ、どのような加算や経過措置が有るかを概略だけでも知っておくのは、損にはならないでしょう。

自分に関係のあるケースもあるでしょうしね。

そこでこのページでは、公的年金制度における加算や、経過措置について概略をご紹介しようと思います。

老齢基礎年金(国民年金の老齢年金)

老齢基礎年金(国民年金の老齢年金)には、振替加算、寡婦年金、付加年金と言った仕組みがあります。

振替加算

振替加算は、加給年金(後述)を貰えなくなった人の配偶者に対する給付です。ですから、振替加算について理解するためには、老齢厚生年金と障害厚生年金の加給年金についての知識が必要です。

■ 加給年金とは

加給年金というのは、詳しくは後述しますが、「妻が一定の条件を満たすと夫の厚生年金に上乗せの給付がある仕組み」のことです。加給年金は「老齢基礎年金」の加算ではなく、「老齢厚生年金」ですので注意してください。

逆に、夫が一定の条件を満たして、妻の厚生年金に上乗せされるケースもあります。

簡単に言うと、老齢厚生年金を受給している人の配偶者の条件によって、受給してている老齢厚生年金の額が増えるとうことですね。

この加給年金は、老齢厚生年金と障害厚生年金を受給している人の配偶者が65歳になると、打ち切られてしまいます。しかし、その後、配偶者の方の老齢基礎年金に加算がされるのです。これが振替加算です。

率直に言って、この説明ではちょっと分かりづらいですね。そこで、具体的な例を考えてみましょう。

例えば、次のようなケースだと理解すると分かりやすいでしょう。

ある夫婦を考えます。この夫の老齢厚生年金には、加給年金が加算されています。妻が65歳になるまで加算されるとしましょう。この加給年金は、妻が65歳になると無くなります。しかし、その後は、妻の老齢基礎年金に振替加算が上乗せされるのです。

付加年金

付加年金は、国民年金の第1号被保険者が利用できる年金額を増やす仕組みです。自分で追加の掛金を払うことで、年金額を増やせるのです。

具体的には、付加年金の保険料(付加保険料と言います)を納められるのは、第1号被保険者と任意加入被保険者に限られます。月々の保険料は、400円です。

上乗せされる年金額は、年額で「付加保険料を納付した月数 × 200円」です。例えば、10年間納付していれば、1年で2万4000円(= 120 × 200)が上乗せされます。

ということは、インフレを無視すれば、2年で元が取れる計算です。大変にお得な仕組みだと考えていいでしょう。まあ、インフレがあるので、若い頃の付加保険料はそれほど有利とは言えないかもしれませんが。

付加保険料の申込みは、自分の住んでいるところの市区町村役場です。興味があれば、役所に行ってみるといいでしょう。

ちなみに、iDeCo と付加年金は同時に利用できます。しかし、国民年金基金に加入中の人は、付加保険料を納付できません。

寡婦年金

寡婦年金は第1号被保険者の妻に対する給付です。「寡婦」というのは、夫を亡くした妻のことですね。要するに、未亡人のことです。

亡くなった夫が一定の条件を満たす場合、この妻は寡婦年金という年金を貰うことが出来ます。期間は妻が60歳から65歳になるまでです。要するに、妻本人が老齢基礎年金を貰うようになったら、給付は終了ということですね。

妻が寡婦年金を貰うには、夫は次のような条件を満たす必要があります。

  • 第1号被保険者として保険料を納めた期間(免除期間を含む)が10年以上あること
  • 10年以上継続して婚姻関係にあること
  • 妻は夫に生計を維持されていたこと

亡くなった夫は10年以上は第1号被保険者でないといけないので、ある程度の期間自営業などをやっている事が条件となります。学校を出てからずっと会社員では、条件は満たせないでしょう。

例えば、20歳から22歳まで大学生として国民年金の保険料を納付し、23歳から50歳まで会社員として勤務。その後、51歳から59歳まで自営業者として国民年金の保険料を納付した。こんな感じのパターンが考えられますね。

受け取れる年金額は、「夫の第1号被保険者期間だけで計算した老齢基礎年金額の4分の3」です。例えば、夫が10年間国民年金の保険料を納めていた場合、納付期間は全体の4分の1です。国民年金の年金額は納付期間に比例するのでこの妻は、次の計算式で計算した金額がもらえます。

満額の老齢基礎年金 × 1/4 × 3/4

満額が約80万円だとすると、15万円となります。これが5年貰えるわけですから、総額で75万円です。それほど大きな額ではありませんが、生活の足しくらいにはなるでしょう。

ちなみに、上の条件を満たしても、寡婦年金が受給できない場合があります。

  • 亡くなった夫が、障害基礎年金の受給権者であった場合
  • 亡くなった夫が、老齢基礎年金を受けたことがある場合
  • 妻が繰り上げ支給の老齢基礎年金を受けている場合
  • ということは、妻の老齢基礎年金の繰り上げ受給が不利に働くケースがあるということですね。このあたりは注意が必要です。

    障害基礎年金(国民年金の障害年金)

    障害基礎年金には、この加算という加算措置があります。

    子の加算

    障害基礎年金には、「子の加算」と呼ばれる加算があります。障害者に一定の条件を満たす子供がいると、年金額に上乗せがあるのです。

    具体的には、平成30年4月時点では、子供2人目までは1人につき22万4300円が加算されます。3人目以降は1人に付き7万4800円です。

    子の加算がされる子供の条件ですが、次のどちらかを満たす必要があります。

    • 18歳の3月31日になっていない
    • 20歳未満で障害等級1級または2級の障害者

    ということは、例えば4人の子供がいたとします。上からAさん(19歳)、Bさん(16歳)、Cさん(14歳)、Dさん(13歳)としましょう。

    19歳のAさんが障害者でないとすると、この加算の対象になるのはBさんCさんDさんです。この時、BさんとCさんには、それぞれ22万4300円が加算されます。そしてDさんには、7万4800円が加算されることになります。

    つまりこのケースだと、年間で50万円以上の加算があるわけですね。

    遺族基礎年金(国民年金の遺族年金)

    遺族基礎年金にも障害基礎年金と類似のこの加算があります。また、遺族基礎年金が受給できないケースでは、死亡一時金というものが給付されるケースもあります。

    子の加算

    遺族基礎年金(国民年金の遺族年金)にも障害基礎年金と類似のこの加算があります。亡くなった人の配偶者が受給者の場合は、障害基礎年金のこの加算と同じです。具体的には、次のような感じです。

    • 2人目まで:1人につき22万4300円
    • 3人目以降:1人につき7万4800円

    子供の条件も、障害基礎年金と同じです。18歳の3月を迎えていないこと、または20歳未満で障害1級または2級の障害者であることというのが条件です。

    しかし、子供に支給されるときには、次のように変わります。子供に支給されるというのは、例えば、もう片方の親も既に亡くなっているというような場合ですね。

    • 1人目:なし
    • 2人目:22万4300円
    • 3人目以降:1人につき7万4800円

    要するに、1人目に対する加算が無くなるわけですね。

    死亡一時金

    ある程度の期間保険料を納めた人が、老齢基礎年金も障害基礎年金も受給しないで亡くなったとします。この時、遺族に死亡一時金が支払われる事があります。一時金なので、一回給付されておしまいです。

    ただし、遺族が遺族基礎年金を受給できる時は、死亡一時金は給付されません。むしろ、遺族基礎年金が給付されない時の給付という方が正確でしょう。

    死亡一時金を貰うには、保険料を納めた期間が36か月以上必要です。納付免除期間がある場合は、納付免除の割合に応じて計算します。1

    死亡一時金を貰うのは、順位が高い方から次の順番です。

    1. 配偶者
    2. 父母
    3. 祖父母
    4. 兄弟姉妹

    この中で一番順位が高い人に給付されます。配偶者がいれば配偶者に給付されます。それがいなければ子供といった具合ですね。

    ちなみに、死亡一時金の額は、保険料を納めた月数によって変動します。36か月の場合は12万円で最高額が32万円です。

    また、付加保険料を納めた月数が36月以上ある場合は、8,500円が加算されます。寡婦年金を受けられる場合は、どちらか一方を選択します。

    死亡一時金には時効があります。死亡日の翌日から2年です。

    老齢厚生年金

    加給年金

    老齢厚生年金をもらう人が、一定の条件を満たす時、年金額の加算があります。これを加給年金と言います。

    具体的には、次のような条件です。

    • 老齢厚生年金を受け取る人に、厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある方こと
    • 65歳到達時点で、その方に生計を維持されている、65歳未満の配偶者または18歳の3月末までの子(あるいは1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子)がいること

    経過的加算

    60歳から65歳まで給付される、特別支給の老齢厚生年金という年金があります(後述)。この年金は、定額部分と報酬比例部分に分けることが出来ます。

    そして、65歳以降の老齢厚生年金では、それまでの定額部分が老齢基礎年金になります。また、報酬比例部分が老齢厚生年金になります。

    当分の間は、老齢基礎年金の額より定額部分の額のほうが大きくなります。そこで、65歳以降の老齢厚生年金では、定額部分から老齢基礎年金を引いた額が加算されます。

    これを経過的加算といいます。ようするに、65歳以降も60歳からの年金額がを維持するという仕組みになっていうるわけです。

    特別支給の老齢厚生年金

    公的年金の老齢年金の受給開始は、65歳からというのが原則です。しかし以前は、60歳から受給が可能でした。

    60歳から65歳までいきなり受給開始の年齢を引き上げるわけにはいかないので、徐々に受給開始年齢を引き上げるという措置が取られています。これが、特別支給の老齢厚生年金です。

    特別支給の老齢厚生年金の対象になるのは、次のような人たちです。

    • 男性の場合、昭和36年4月1日以前に生まれであること
    • 女性の場合、昭和41年4月1日以前に生まれであること
    • 老齢基礎年金の受給資格期間(10年)があること
    • 厚生年金保険等に1年以上加入していたこと
    • 60歳以上であること

    この特別支給の老齢厚生年金に関しては、段階的な引き上げが行われているため、受給開始や受給額の計算方法が生まれた年によって違います。

    遺族厚生年金

    中高齢寡婦加算

    中高齢寡婦加算というのは、40歳以上65歳まで(中高齢)の遺族厚生年金を受給する未亡人(寡婦)に対する加算のことです。

    「遺族基礎年金(←遺族厚生年金ではなく基礎年金です)」を受給できるのは、一般的には、子供が18歳の3月までに限られます。そうすると、そこから先は、遺族が受給できるのは遺族厚生年金だけになってしまいます。

    また、子供がいない妻は、夫が亡くなった場合に遺族基礎年金を受給できません。そうすると、受給する年金の額が小さくなってしまいます。

    これらを補う仕組みが、中高齢寡婦加算です。

    遺族基礎年金をもらえない場合の措置とは言っても、あくまで遺族厚生年金の加算です。ですから、夫の死後に妻が遺族厚生年金を貰えることが条件となります。

    ということは、例えば夫が亡くなった時に自営業だった場合などは、もらえないケースが多いでしょう。

    経過的寡婦加算

    上に書いたように、中高齢寡婦加算は65歳になると終了します。それに代わって65歳以降も加算が受けられるケースがあります。それが経過的寡婦加算です。

    中高齢寡婦加算をもらっていた人は、65歳以降に、本人の老齢基礎年金を受給することになります。しかしこの金額が中高齢寡婦加算の額を下回る事があるのです。

    これを補うのが、経過的寡婦加算という仕組みです。

    ただ、「経過的」という名前からわかるように、この加算は将来的にはなくなります。具体的には、1956年4月1日以前に生まれていないと、この加算の対象にはなりません。

    何でこんなふうに時間的な区切りがあるかと言うと、昔の年金制度では現在のような国民皆年金が実現されていなかったからです。本人の不可抗力で年金が減るので、保険料を払っていなくても上乗せしてあげようという話です。

    わからない話ではありませんが、やっぱり不公平な感じもありますね。保険料を払っていないのに加算がある世代があるかと思えば、保険料をちゃんと払っていても現役世代の年金は確実に減っていくわけですから。

    まあ、当時の政治家が、人気取りのために作った制度なのでしょうね。あるいは、少子高齢化の見通しが甘すぎたかです。

    このあたりの理不尽さを追求していたら、キリがありませんけどね。不公平感が残るのは、否めません。

    1. 4分の3納付月数は4分の3月、半額納付月数は2分の1月、4分の1納付月数は4分の1月として計算 []

    遺族基礎年金と遺族厚生年金が貰える条件

    2018年10月16日 火曜日

    公的な遺族年金である遺族基礎年金と遺族厚生年金には、誰かしらが受給できるケースとそうでないケースがあります。せっかく公的年金制度に入っていても、誰も遺族年金をもらえないケースがあるのです。

    どんなケースで受給可能で、どんなケースでは受給できないのでしょうか。生命保険について考える上で非常に重要なので、確認しておきましょう。

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    こんな時、国民年金の保険料は払う必要があるの?

    2018年10月16日 火曜日

    妻が夫の扶養に入っていた場合、妻は国民年金の保険料を払う必要がありません。こんな場合、夫が定年退職したら、妻は国民年金の保険料を払わないといけないのでしょうか。

    今勤めている会社を辞めて、数か月後に別の会社に入ることが決まっていたとします。こんな場合は、国民年金の保険料はどうなるのでしょうか。

    このように、判断にちょっと迷うようなケースについて、いくつかチェックしてみましょう。

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    夫が定年退職した後の妻の国民年金保険料はどうなる?

    2018年10月16日 火曜日

    夫が会社員で、妻が専業主婦またはパートタイムの仕事をしているという家庭は珍しくありません。妻の稼ぎにもよりますが、こういう家庭では、妻は国民年金の第3号被保険者であることが多いでしょう。第3号被保険者と言うのは、国民年金を納める必要が無い人の事です。

    さて、こういう家庭で夫が定年退職したとします。こんなケースでは、妻の国民根金の取り扱はどうなるのでしょうか。

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    保険料の納付免除や納付免除の基本を確認しよう

    2018年10月15日 月曜日

    国民年金には保険料の納付免除や納付猶予に関する仕組みがあります。経済的な理由などで保険料を納付するのが困難な人に対しての仕組みがあるわけです。

    でも、この保険料納付猶予や免除は、どの程度有利なのでしょうか。基本的な部分を確認してみましょう。

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    【国民年金】学生の納付特例期間や納付猶予期間などの意味は?

    2018年10月14日 日曜日

    国民年金には保険料納付免除期間、保険料納付猶予期間、学生の納付特例期間といった仕組みがあります。一定の条件を満たす人は、手続きをすると、保険料の納付をしなくても催促されなくなるのです。

    さて、これらの納付猶予期間や納付免除期間には、具体的にどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。特に、学生の納付特例期間と納付猶予期間にはなにか意味があるのでしょうか。

    基本的ですが重要な部分ですので、確認してみましょう。

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    【社会保険の被保険者】国民年金と厚生年金の加入者に関する基礎知識

    2018年10月9日 火曜日

    国民年金の被保険者(いわゆる加入者のこと)には3つのタイプがあります。どんなタイプがあり、どんな基準で振り分けられているのか、確認しておきましょう。

    また、厚生年金の被保険者になるには、どのような条件が有るのでしょうか。こちらも重要なので、確認しておきましょう。

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    厚生年金の保険料はいつからいつまで納める?

    2018年10月6日 土曜日

    国民年金の保険料は、20歳から60歳まで納めるのが基本です。この事は多くの人が知っているでしょう。

    それでは、会社員が入る厚生年金の場合はどうでしょうか。高卒で就職した場合は、18歳から納めないといけないのでしょうか。あるいは、60歳以降まで働く場合はどうなのでしょうか。

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    1年だけ厚生年金に入ったら、将来いくら年金を貰えるの?

    2018年10月6日 土曜日

    例えば1年間厚生年金に入ったとします。将来、厚生年金はもらえるのでしょうか。もらえるとしたら、年金額はいくらになるでしょうか。

    ここでは、月収が20万円、30万円、40万円として計算してみましょう。1年だけの加入でも、多少なりとも生活の足しになるのでしょうか。

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